1年間に30回ほどバレエ公演には足を運ぶ。豪華絢爛な舞台セットでダンサーたちが身振りや踊
りで感情を表現して物語が進んでゆく。きらびやかな衣装のダンサーも人間だから、時には踊り
が乱れることもある。そんなときは「高いお金を払って観に来てるのだから、もっと練習してお
いてよ~」と心の中でつぶやいてしまう。
毎日練習を重ねているプロでもミスをしてしまうバレエって何なのだろう。。ちょっと興味をもっ
て物の本を紐解いてみた。
バレエの起源であるルネッサンス期イタリアのダンスが、フランス王室に嫁いだカトリーヌ・
ド・メディシスによってフランスに伝えられたのは16世紀であった。それから約100年後、自ら
もダンサーであり、バレエに熱中していた 時の王ルイ14世がバレエ学校を創立し、バレエが舞
台芸術として体系化され、バレエ文化が花開いた。バレエ用語にフランス語が多いのはそのため
だ。レッスン場でのカウントが「アン・ドゥ・トロワ」である意味が今さらながら腑に落ちた。
その後、バレエは宮廷から劇場へ移り、画家ドガのパステル画にみられるように大衆の娯楽へと
なっていった。
バレエの振り付けは人間の体を極限まで美しく見せるために、その動きを指先から爪先まで考え
つくされたものである。ダンサーは両脚を付け根から外側へぐいと回し、膝も爪先も外側に向い
た状態のまま踊ることで美しく素早く脚を動かすことができるそうだ。
バレエを踊るときには、動作の始まり・途中・終わりで用いる腕・脚の決められたポジション(位
置)がある。脚の「5つのポジション」をちょっと真似てみた。1番のポジション、2番のポジショ
ン、3番・・・・・それだけで足がつった。
ダンサーにはしなやかさと力強さが求められるので日頃の鍛錬がとても大切。レッスンのときで
さえ事前に長い時間をかけストレッチを行っている。
ステージで演じられる踊りはそのどれもがとても難しい体の動きの連続であることを知った。
バレエの見方が変わったことは言うまでもない。知らない世界を垣間見ることはとても面白い。
バレエ公演の幕間では舞台に刺激された女の子たちがホワイエのあちらこちらでクルクル回って
いる。おそらくバレエを習っている子だろう。将来舞台で拍手喝采を浴びるスターの卵かもしれ
ない。見ていて気持ちがほっこりする。
舞台でミスなく踊ることが当たり前とみられるダンサーは大変な職業だ。しかし、それはどんな
職業でも同じかもしれない。お金をもらう以上、100%以上のパフォーマンスで応えるのがプロだ
と思う。
バレエ界で華々しい活躍を続ける熊川哲也氏は自著の中でこう述べている。「完璧という領域はた
しかに存在する」「完璧など存在しないと人は言うが、それは失敗から目を逸らしたり夢を諦めた
りする言い訳にすぎない」と。まったく同感だ。
優雅に水面を進む白鳥は水面下で足をバタバタさせ水を掻いている。苦労や努力の跡を微塵も感
じさせることなく、大変なことでも涼しい顔でやり遂げる姿勢は私が目指す生き方でもある。
劇場では発声が解禁になり「BRAVO!」「BRAVI!」が響き渡っている。今月は『白鳥の
湖』を鑑賞する予定だ。