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オペラのはなし🎵【C部長】

先日、初台にある新国立劇場オペラパレスの舞台に立ちました。
もちろん、歌や演技を披露したわけではなく、バレエを踊ったわけでもありません。
某オペラ歌手の案内で歌劇場の舞台裏を見学する機会がありました。

劇場1階席前方脇にある立入禁止の扉を入り、ずらりと並んだ楽屋を通り過ぎたところに舞台へ
の通路がありました。舞台に上ると客席がとても近くに見えることにびっくり!1階から4階ま
で観客の顔がはっきりと見えるほどです。案内をしてくれたテノール氏によると居眠している観
客はすぐにわかるそうです。

オペラ専用劇場である同劇場の主舞台は縦横が18mあり上下に動かすことができます。さら
に、主舞台の上手(主舞台に向かって右側)・下手(主舞台に向かって左側)・舞台奥には同じサイ
ズの舞台があり、それらを動かして4つのセットで上演できます。

世界には巨大な歌劇場があり、1990年に杮落しとなった地上7階・地下6階建のパリ・バスティー
ユ歌劇場は2703席の客席を有し、世界最大の9面舞台を誇ります。遮音壁を設置することによ
り、オペラを上演しながら、他のオペラの稽古ができるそうです。

オーケストラが演奏するオーケストラピット(舞台と客席の間にある窪み)は演奏の規模により床
の深さを調節できます。オーケストラの音は舞台上の出演者には聞こえないため、出演者だけに
音楽が聞こえる小さなスピーカーが舞台上のあちらこちらに設置されています。

また、出演者にはオーケストラピットの指揮者が見えないため、舞台周りに設置された10台ほ
どのモニターに指揮者が映し出されるようになっています。かなり高所に設置された下向のモニ
ターは、当日の舞台でソリストがソファに寝ながら歌う目線に設置されているとのことでした。
それでも、舞台上で指揮者が見えない時には、客席後方にあるガラス窓の部屋に副指揮者が入り
ペンライトでテンポを示すこともあるようです。

客席からは見栄えのする舞台セットも近くで見ると意外と華奢な造りで、海の書割は水の輝きを
表すためにサランラップが巻いてあり、手作り感満載といった印象でした。
オペラは演出が変わらない限り、同じセット・小道具・衣裳と共に世界を周り上演されます。こ
の日はドニゼッティ作曲『ドン・パスクワーレ』が上演されていて、舞台袖には1994年イタリ
ア・ ミラノでの初演時から使用されている衣裳が保管されていました。

舞台裏では出演者が場面に応じて衣装替えをしながら大忙しです。舞台をスムーズに進行させる
ためには、誰がどのタイミングで使用するものなのかを明記した紙をすべての衣裳・小道具に貼
り付け、いつも決まった場所に準備しておくことが肝心だそうです。

上演中に舞台上を動くセットは手動によるもので、音楽に合わせながらピタリと所定位置に舞台
セットを動かすことは機械では難しいそうです。照明スイッチひとつ押すにしても、何をやるに
しても、音楽と合わせた絶妙のタイミングが求められることを考えれば、上演される舞台はとて
つもないチームワークの結晶と言えるでしょう。

オペラは企画から上演まで1000人ものスタッフと1年以上の時間をかけて創り上げてゆくものな
のでチケット代金が高くなるのは仕方のないこと。上演時間が6時間に及ぶ演目でも退屈するこ
となく、音楽が止みカーテンが下りる余韻の中、震えるような感動を覚えるのは、オペラがたく
さんの誇りと拘りにより創り上げられた芸術だからであろう。
今月はワーグナー作曲『トリスタンとイゾルデ』を鑑賞します。

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