3つの作品が私を絵画の世界へと導きました。
①サルバドール・ダリ『記憶の固執』[1931年](ニューヨーク近代美術館蔵)
初めてこの作品を目にしたのは中学時代の美術教科書。ぐにゃりと溶けたような時計、得体の知れない生物、幻想的な背景に強く惹かれて画集を買うきっかけになりました。今でも色あせた複製画が自宅の壁にかかっています。
②レオナルド・ダ・ヴィンチ『聖アンナと聖母子』[1508年](ルーヴル美術館蔵)
受難の象徴である子羊をつかむ幼子イエスとそれをたしなめる母マリア。その目に湛える慈しみと悲しみが印象的な作品。あのダ・ヴィンチがこの作品の前に実際にいたかと思うと不思議な感動を覚えました。
③レンブラント・ファン・レイン『夜警』[1642年](アムステルダム国立美術館蔵)
誰一人として静止していない集団肖像画には躍動感があり、3.6m×4.3mの圧倒的スケールと完璧な構図に飲み込まれます。修復直後にみたこの作品は「光と影」のコントラストが目に沁みるようでした。
かつてヨーロッパの美術館はふらりといつ訪れても簡単に入館することができました。作品に近づかせないための規制ロープもなく、至近で名画の筆遣いを見ることができたものです。画学生が名作を前にイーゼルを立て模写をしている姿もあり、美術作品に対する距離感の違いを日欧間に感じました。
現在ヨーロッパの有名美術館に入館するのは大仕事です。事前予約を取っていても入館まで長蛇の列を覚悟しなければなりません。世の中の多くの人々が美術作品に興味を持つようになった訳ではなく、世界を誰でも自由に行き来できる時代になったということでしょう。
油絵はキャンバスに絵を描く前に下塗りから始めます。塗り重ねてゆく色に将来深みがでるようにするためです。しっかりとした土台に様々な経験を重ね人間に幅がでることと同じですね。
数多くの習作を経て完成する作品には作者の魂が宿っているようです。週末は都内で開催中の『メトロポリタン美術館展』を訪れてみようかと思っています。