アップグレード 〖名詞〗等級や質・性能を上げること (広辞苑)
現在では航空券の予約購入時に事前座席指定できるのが当たり前だが、昔は様子が違っていた。空港での搭乗手続きの際に空いている座席から好みの席を選び搭乗券が発行されていた。窓側・通路側・前方・最後列・・・と、好みの席を確保するために搭乗手続き開始前から列に並んだものだった。
ある時こんなことがあった。
搭乗手続きの際に座席指定ができず出発ゲートで待機していると名前がアナウンスされた。航空会社のカウンターへ行くと「いつもご搭乗いただいているので本日はビジネスクラスにお乗りください」と言われた。予約はエコノミークラスだったので、びっくり!「ああ、これが噂に聞くアップグレードか~」とぴんときた。
なぜ、そのようなことが起きるのか。
そもそも航空会社は予約後のキャンセルを見越して座席数を超えた予約を受けるが、いざ出発当日になっても予想外にキャンセルが発生せず、座席数を上回る予約が残ってしまうオーバーブッキングのときに「アップグレード」が起きる。
エコノミークラスの座席数を超えたエコノミークラス予約客を乗せて運行するためには、超過したエコノミー客に他クラスへ移動してもらうしかない。その移動先がビジネスクラスになるという訳だ。
それでは、誰がアップグレードの対象者となるのでしょう。
飛行機の座席はクラス毎にファースト(F)クラス、ビジネス(C)クラス、エコノミー(Y)クラスと分けられるが、チケットの予約方法や割引率等によって細かくグレード分けされているのが「ブッキング・クラス」と言われる分類だ。
例えばエコノミークラスのブッキング・クラスは、ステータス上位から順に「Y・B・H・K・M・L・V・S・O・G・R・Q・N」と13段階にもなる。
オーバーブッキングの際に、アップグレードとなるエコノミー予約客は、ブッキング・クラス上位から検討されます。
また、「上顧客」「個人客」「ビジネス客」・・・「問題を起こさなさそう」「上品(?)」等もアップグレード対象者を検討する判断基準である・・・と言われている。
私がかつてアップグレードの対象となった理由は「上品」ではないことは確かである。長いこと旅を続けてきたが、航空券のアップグレードは後にも先にもその1回きりだ。
飛行機の旅も40年前と比べてずいぶんと変わってきたものだ。当時は客席最後部3列が喫煙席だった。機内で一番可燃物が収納されているトイレにも灰皿が設置されていたような気がする。客席がジェット燃料の上に設置されていることを思えばぞっとする話だ。大らかだったということかもしれない。
長距離路線で「夕食・夜食・朝食」とサービスされるハイカロリーの機内食は、お腹が空かないから3食目には苦痛を感じたものだった。今では量より質が重視され、メニューも豊富になっている。
天井に吊り下げられた小さなモニターに流れる映画を皆で見上げていたかつてと違い、今では目の前の大きな個人モニターで数あるプログラムからオンデマンドでエンタテイメントが楽しめる。
日本人体型に合わせて設計されていた日系エアラインのビジネスクラスシートピッチ(座席の前後幅)は狭かった。現在の欧米系エアラインのエコノミークラスより少し広い程度だった。
今や座席は人間工学に基づき設計や素材が変化し、座席幅も広くなってきた。窓には日除けシェードがなく、ボタンひとつで窓ガラスが真っ暗になる。トイレは広くキレイで、室内に窓が設置されている機材もある。
かつてオフシーズンにはガラガラな便に搭乗することが割とあった。4人席をひとり占め。肘掛を上げて横になっていても何も言われなかった。今は業務効率が求められ、複数の航空会社が共同で1便を運航することが普通になり、ガラガラな便を見ることがなくなった。
新しい飛行機(機材)が就航すると乗ってみたくなる。
私のお気に入りはボーイング787型機だ。もっこりした機首に鋭く流れるような主翼をみているだけで飽きることはない。エアバスの新機種A350型機には近いうちに搭乗できそうだ。私はオタクではない。